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宜保クリニック

住所
〒399-0036
長野県松本市村井町南1-34-20
→地図はこちら
電話番号
0263-57-6060
診察内容
消化器内科
肝臓内科
内科一般
禁煙外来
院長
医学博士 宜保行雄
診療時間、休診日
時間/曜日 日・祝日
8:30
 ~12:30
15:00
 ~18:00
当クリニックは予約制です。

C型肝炎

C型肝炎の説明

はじめに

第1章では、C型慢性肝炎がどのような病気なのかを、最新の情報をもとにまとめています。効果的な治療のためには、特にこのような慢性の病気では、患者さん自身が正しい病気の知識を持つことが大切だからです。

第2章では治療法を取り上げました。ここでは最新の情報に基づいて、いまどのような治療の選択があるかを紹介しています。

第3章では、C型慢性肝炎の経過を知るために特に大切な検査について説明しています。症状だけでは十分にわからない体の状態を語ってくれるのが検査です。病気がどのくらい進んでいるのか、どのような治療が適切か、副作用の心配はないか、検査の意義は何かを知っておきましょう。

なお、同じ慢性肝炎でもB型とC型とではさまざまな違いがあります。本文に書かれていることはB型慢性肝炎の患者さんには当てはまらないことも多い点にご留意ください。

第1章「C型慢性肝炎」とはどんな病気?

Ⅰ.肝臓の働き

■食べ物からとった栄養素が送られる臓器

肝臓はとても大きな臓器で、重さが1~1.5kgもあります。大きいだけではありません。他の臓器が動脈だけから血液を供給されているのに対し、肝臓には、肝動脈のほか、門脈からも腸で吸収された栄養素を豊富に含む血液が流れ込んでいます。そして、肝臓から出た血液は、肝静脈を通じて心臓へと送られます。

■肝臓は巨大な総合化学会社

脳をコンピュータシステム、心臓をポンプにたとえるとすれば、さしずめ大化学工場、貯蔵庫、集配センターを備えた巨大な総合化学会社ともいうべき臓器です。栄養素を豊富に含む門脈血を受け取って、その栄養素を体に必要な物質に変えて全身へ送り出したり、エネルギー源として蓄える仕事をしています。

また、肝臓は、門脈血に含まれるアルコールや毒物などを捕まえ、分解して解毒する役目も担っています。

■廃棄物を処理する機能をもつ

さらに、肝臓では胆汁が作られています。胆汁には食べ物の消化・吸収を助ける働きをする胆汁酸と、ビリルビン(脾臓で赤血球が分解されてできた物質)などの体にとって無用な物質が含まれています。

胆汁は、肝臓から胆嚢を経て腸に排出され、腸内での消化・吸収に利用された後、体外へ排出されます。

■生きるのに欠かせない臓器

肝臓には痛みを感じる知覚神経がなく、炎症などが起こって肝臓が傷ついても、私たちは直接痛みを感じません。

また、肝臓は、脳や心臓とともに生命を維持するのに欠かせない臓器で、仮に肝臓を全部切り取ってしまうと、私たちは生きていくことができなくなってしまいます。まさに生きるのに欠かせない臓器というわけです。

Ⅱ.ウイルスと肝炎

■ウイルスは寄生して子孫を残す

ウイルスは、自分自身の設計図であり遺伝子と、それを包む殻から成る微生物です。細菌と混同されがちですが、異なります。それは、細菌が自分で細胞分裂をして繁殖するのに対し、ウイルスは自分の子を作るのに必要なたんぱく質や遺伝子を直接作り出す能力がなく、ほかの生き物の力を借りないと繁殖できない点です。このため、ウイルスは動植物や細菌の細胞に進入し、寄生して子孫を残してゆくのです。

■肝細胞の中で肝炎ウイルスの子が作られる

地球上にはさまざまな種類のウイルスが存在していますが、それらは、特定の生き物の、特定の細胞に進入するための合鍵をそれぞれもっていると考えられています。そして、人間の肝細胞に対する合鍵をもっているのが、肝炎ウイルスです。

肝炎ウイルスが人間の体の中に進入し肝細胞に付着すると、その遺伝子は肝細胞の中にするりと入り、肝細胞に情報を与えます。すると、肝細胞の中でウイルスに必要なたんぱく質が大量に作り出され、遺伝子も大量に複製され、設計図に従ってウイルスの体が組み立てられます。

こうして、ひとつの肝炎ウイルスの遺伝子からたくさんの子が生み出されていきます。そして、新しく生まれた子の肝細胞を飛び出し、ほかの肝細胞に感染する・・・・・・と、こういったことの繰り返しによって、増えていくのです。

Ⅲ.C型肝炎の特徴

■C型肝炎は慢性化しやすい

C型慢性肝炎は、C型慢性肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こるウイルス性肝炎です。HCVは主に血液を介して感染し、呼吸、飲食、単なる皮膚の接触などでうつる心配はありません。なお、性交渉については、うつる心配はまったくないとはいえませんが、その確率は非常に低いと考えられています。また、コンドームの使用により感染を予防することは可能とされています。

HCVに感染すると急性肝炎が起こりますが、一般に症状が軽く、感染に気づかないケースがほとんどです。しかしHCV感染による肝炎は、慢性化しやすいという特徴があります。事実、急性期に免疫によって自然に治る人は少なく、大多数の人は慢性肝炎に移行します。そして慢性肝炎になると、自然治癒はまず期待できません。

HCVに感染すると、体の中でHCV抗体が作り出されます。そこで、血液中のこの抗体の有無を調べることで、HCVが体の中に入ったかどうかを知ることができます。また、血液中にあるHCVの遺伝子を体外で増やして検出するPCR法によるHCV-RNA*検査も行われています。

*RNA:ウイルス以外の生物の遺伝情報はすべてDNAという物質に収められています。これに対し、ウイルスのなかには、RNAが遺伝情報の担い手となっているものがあり、HCVもそのひとつです。

Ⅳ.進行しなければC型の「慢性肝炎」は怖くない

■症状はほとんどない

HCV抗体検査やHCV-RNA検査に陽性で、血液中のGOT(AST)、GPT(ALT)の値の以上が6ヶ月以上続いた場合、C型慢性肝炎と診断されます。

GOTとGPTが高いということは、肝細胞が壊れているサインなのですが、C型慢性肝炎で見られる、例えばGPT100とか200といった値では、日常生活に支障が出ることはありません。肝臓は予備能力の高い臓器ですので、多少肝細胞が破壊されたとしても、十分に自分の仕事をこなすことができるのです。また、肝臓は再生力にすぐれた臓器でもあります。破壊された肝細胞はある程度自然に修復されますから、GOT、GPTの高い状態が続いても、短い期間のうちに肝臓の機能が落ちてしまうことはありません。

ですから、C型慢性肝炎のほとんどは症状も現れず、健康な人と同じように生活することができます。急性の感染症や症状がたびたび出るアレルギー性の病気に比べれば、普段の生活でのやっかいさは、はるかに少ないのです。心配なのは、次に述べるようにC型慢性肝炎は肝硬変へ進行し、肝癌の発生に結びつくことです。

Ⅴ.静かに進行する - これが心配

■歳月を経て少し筒進行する繊維化

GOT、GPTが上昇しても、自覚症状はほとんど現れません。しかし、肝炎が続くと、肝臓の中に繊維というものが盛んに作られるようになります。
肝臓の中で、肝細胞は規則正しく並んでいるのですが、破壊・再生が頻繁に繰り返されると、そのうちに修復が追いつかなくなり、本来、細胞が再生されるべき部分が繊維で埋まってきます(肝臓の繊維化)。C型慢性肝炎の場合、繊維化は短期間のうちに急に進むということは少なく、長い時間をかけて少しづつ進行します。20年前後の歳月を経て、肝臓は繊維化した部分と正常な肝細胞の部分とが入りまじり、表面がこぶ状に盛り上がり、硬くなってしまいます。このように高度に繊維化した状態を肝硬変といいます。

■繊維化が進むほど肝癌が発生しやすくなる

一般に、肝臓の繊維化が進めば進むほど、肝癌ができやすくなると言われています。直接の発癌リスクとしてもっとも重要なのは、繊維化の進み具合です。初期の段階であれば、肝癌のできる確率は健康な人と同程度ですので、心配する必要はありません。しかし、繊維化がかなり進行した慢性肝炎では、その確率が高くなります。そして、肝硬変になると1年間に数%程度の確率で肝癌ができると言われています。

また、繊維化がかなり進行し、肝硬変に近づいた状態の慢性肝炎では、GOT、GPTが高いと肝細胞の破壊・再生が頻繁に繰り返されることになり、やはり肝癌のできる確率は高くなると考えられています。

■肝硬変が高度に進んで初めて症状が現れる

肝硬変になっても、初期の段階では肝機能が維持されるため、慢性肝炎のときと同様、ほとんど自覚症状は現れません。肝臓の負担となるようなことをしたり、肝硬変が高度に進んだとき、肝臓がいよいよ自分の仕事をこなしきれなくなって初めて、だるい、食欲がない、疲れがなかなかとれない、尿が褐色になるといった変化に加え、黄疸、腹水、食道静脈瘤、脾腫、肝性脳症などの気をつけなければ成らない症状が現れてきます。ただし、こういった症状も適切な治療によって抑えることができます。

■黄疸、腹水は肝機能の低下で起こる

黄疸は血液中にビリルビン(老化した赤血球が脾臓で分解されてできた黄色の有害物質)が増えるために起こります。肝臓では胆汁が作られ、胆管を通じて腸へと送り出されていますが、肝機能が落ちると胆汁が正常に流れなくなるので、本来、胆汁とともに排泄されるべきビリルビンが処理されなくなるのです。

また、血液の水分を保持するはたらきをしているアルブミンという物質の生成量が減ることなどにより、肝臓の血管系から水分が漏れ出し、腹水がたまってきます。

■肝臓の血流障害で食道静脈瘤や脾腫が発症

肝臓を流れる血液の約3分の2は、門脈という太い血管から、残る3分の1は、肝動脈から供給されています。肝硬変になると肝臓内に血液が流れにくくなるため、門脈の血流がとどこおるようになり、大量の血液が肝臓を迂回しようとします。そのような血液の一部が食道静脈に流れ込むことにより食道に静脈瘤ができ、脾臓も肝臓に血液を送り出せなくなるために腫れてきます(脾腫)。
特に食道静脈瘤は、破裂すると出血するので、十分に注意し、出血を予防しなければなりません。

*静脈瘤:血液がたまって風船のように膨れ上がった状態の静脈のこと。

■有害物質が血液中に増えると肝性脳症が現れる

肝性脳症は、体調が悪くなったり、肝臓の解毒作用が落ちたりすることによってアンモニア等の有害物質が血液中に増えるために起こります。血液によって有害物質が運搬され、いちばん被害を受けやすいのが脳で、様々な症状となって現れます。例えば集中力の低下や昏睡といった意識障害です。主に肝機能の低下により発症しますが、門脈から迂回した、肝臓を通らない血液が増えることによっても起こります。

■肝癌、肝硬変予防が治療の目的

肝癌や肝硬変の診断法と治療法は日々進歩しており、早期に治療すれば悲観するには及びません。しかし、頻繁な検査と治療、食事制限などにより、日常生活が多少不自由になることは否めません。だからこそ、将来、肝癌や肝硬変にならないよう、慢性肝炎の段階で病気の進行を止めることが大切で、またC型慢性肝炎の治療の目的もそこにあるのです。

第2章 どんな治療法があるか

Ⅰ.治療の目的 - HCVの排除と肝臓の保護

C型慢性肝炎の薬物治療法は、その目的によって大きく2つに分けることができます。ひとつは、この病気の原因であるC型肝炎ウイルス(HCV)を体内から排除することを目的とした抗ウイルスインターフェロンやリバビリンを使う抗ウイルス療法です。もうひとつは、肝臓を保護して病気が進むのを抑える治療で、グリチルリチン製剤の注射や小柴胡湯、ウルソデスオキシコール酸製剤などの内服薬が用いられます。これらは医学の進歩や変化に応じ、厚生労働省研究班よりガイドラインとして示されています。

■HCVを排除できれば肝炎は治る

C型慢性肝炎の進行を止めるには、HCVを体内から追い出してしまうことが一番です。HCVがなくなれば、リンパ球が肝細胞を攻撃することもなくなり、肝炎は自然に治ります。

抗ウイルス療法は、HCVの増殖を抑えるはたらきをもっているため、HCVを体内から排除できる可能性があり、排除に成功すれば肝炎を完全に治すことができます。

ただし、炎症自体が完全になくなっても、それまでに進んでしまった肝臓の繊維化はすぐには戻らず、傷あとのような形で残ります。しかし、肝臓は再生力の強い臓器なので、この傷あとにも長い時間をかけて正常な肝細胞が少しずつ生まれ、ゆっくりと元のような肝臓に再生されていくのではないかと考えられています。

リバビリン単独ではC型慢性肝炎を治すことはできませんが、インターフェロンと併用すると、従来のインターフェロン単独の治療法に比べて有効率が高くなりますが、副作用も強く中止する率も単独の2~3倍に増加してしまいます。

■肝臓を保護する治療は肝硬変や肝癌への進展を遅延させるため

肝臓を保護する治療は、肝硬変や肝癌へ進展することを遅延させる目的で行われ、炎症を抑え、幹細胞の破壊を防ぐ薬が用いられます。肝硬変や肝癌は、肝細胞が繰り返し壊されることや、繊維化が進為に起こるので、肝細胞が壊されるのを薬で抑えれば、肝硬変への進展を遅らせ、肝癌ができる確率を減らすことが期待できます。

肝臓を保護する治療の場合、生涯続けてゆく必要があり、長期にわたって薬を服用する事になります。ですから、治療を受けるにあたっては、薬について正しい知識を持っておくことが重要です。

まず第一に知っておかなければいけないことは、どんな薬にも体にとって好ましい作用(効果)と好ましくない作用(副作用)があるということです。医師は患者さんの体質、病状などを考慮したうえで、薬の治療効果と副作用の現れる危険度とを慎重に見極め、服用量を決めています。薬をたくさんのめば治るというわけではなく、医師の指示どおりの量を正しくのんで初めて、薬としての効果が発揮され、副作用を最小限に抑えることができるのです。また、薬ののみあわせによっては、思わぬ副作用が出ることがあります。複数の病院で薬の投与を受けている場合や、市販薬を服用している場合は、医師や薬剤師に必ずその旨を申し出るようにしてください。

治療中に体の異常が現れたときは、薬の副作用かもしれませんから、すぐに主治医に報告し、適切な処置をとってもらうようにすることが大切です。

インターフェロン - HCVを排除する

【インターフェロンとはどんな薬か】
■抗ウイルス作用をもつ

私たちがウイルスに感染すると、そのウイルスに対抗できるように物質が体内で作り出されます。そのような物質の一つがインターフェロンです。

インターフェロンは、体の細胞にくっつき、これに信号を送ります。すると、ウイルスの遺伝子を切断する物質や、ウイルスのたんぱく質が作られるのを妨げる物質が作り出され、ウイルスは増えることができなくなってしまいます。

■C型肝炎の治療で使われるのはα型とβ型

インターフェロンの抗ウイルス作用はたいへん強いのですが、HCVのように感染が持続しやすいウイルスに対しては、体内で作られるインターフェロンでは、とうてい追いつきません。ですから、ウイルスを排除するためには、その不足分を補うべく外から大量のインターフェロンを追加しなければなりません。これがインターフェロン療法です。

インターフェロンはα、β、γの3種類が発見されており、このうち、αとβがC型慢性肝炎の治療に用いられます。

【2.インターフェロンリバビリン療法の実際】
■治療期間の制限は無くなりました。一般に入院が必要ですが、当クリニックではほとんどすべて外来で行っています。

インターフェロンリバビリン療法には、いくつかの制限が設けられていました。すなわち、慢性肝炎の患者さんのみに使用が認められていましたが、現在、肝硬変でも適応が認められました。これまで、健康保険では、使用期間も制限されていましたが、現在最長72週(1年半)投与が可能です。

インターフェロンαは筋肉内注射、インターフェロンβは静脈注射または点滴静注で投与されます。

【3.よく効く人とあまり効かない人がいる】
■C型慢性肝炎が治る人は40~70%

インターフェロン療法を受ければ、すべての人が治るというわけではありません。その効果は、体内にあるHCV量やHCVのタイプと体内の遺伝子によって20%か80%かが推定されます。

インターフェロン療法の治療効果は、治療中にGPT(ALT)が下がる、HCV量が減少するなど、約70%の人に病状の改善が認められ、最終的にはHCVの排除に成功する人(C型慢性肝炎が治る人)は40~70%と評価されています。なお、最近ではインターフェロン療法でC型慢性肝炎を完全に治すことができなかった場合でも、GPTが下がるなどの効果があれば、肝硬変への進展を抑止したり、将来、肝癌が発生する確率が低くなることが明らかになってきました。

■HCV量が少ないほど効きやすい

血液中のHCV量はHC-RNA定量検査(分岐DNAプローブ法あるいはPCR法)などで図ることができますが、その値は人によって大きな差があり、多い人は少ない人の1億倍にもなります。当然、HCVが多い人よりも、HCVの少ない人の方がインターフェロンで治る確率は高くなります。

■効き易いタイプのHCVがある

HCVにもさまざまな種類がありますが、日本でみられるものは、グループ1とグループ2の大きくふたつのグループにわけられます。このうち、グループ2は比較的インターフェロンがよく効くといわれています。

■患者さんの血液中のIL28を測定し、インターフェロン+リバビリン療法が85%有効か、10%有効か予知することが可能です。(保険適応外)
【4.インターフェロンの副作用】
■初期には発熱などの症状が現れる

インターフェロンはもともと体内で作られる物質ですが、治療は大量に使われるので、副作用も強く出ます。
インターフェロンの副作用は、初期(治療開始~2週)、中期(2週~3か月)、後期(3か月以降)で現れてくる症状が異なります。
初期には、インターフェロンの急激な増加に体が対応できず、さまざまな症状が出てきます。なかでも、発熱と全身倦怠感はほぼ100%の人に発症し、頭痛、筋肉痛、食欲不振なども効率に現れます。ただし、これらの症状は投与を続けるうちに徐々に軽快します。また、発熱や頭痛は解熱鎮痛剤の坐薬や内服薬を使うことにより、かなり抑えることができます。いずれにせよ、早めのチェック、主治医への相談が大切です。

■副作用の為に治療が中止されることも

インターフェロン療法は、白血球や血小板の著しい減少、糖尿病の悪化、重いうつ症状、甲状腺の異常などが現れた場合、中止されることがあります。そのほか、脱毛、視力障害(眼底出血)もみられます。しかし、これらは投与を中止すれば元に戻ります。また、糖尿病、心臓病、腎臓病、膠原病のある人は、病状が安定している時期を見はからってインターフェロン療法が行われます。

インターフェロンの主な副作用
現れる時期 あまり心配のないもの 特に注意が必要なもの
初期
(治療開始~2週以内)
●発熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛・関節痛などの風邪のような症状*
●発疹
 
中期
(治療2週~3か月以内)
●食欲不振
●不眠、イライラ
●うつ状態
●視力障害
後期
(治療3か月以降)
●脱毛** ●間質性肺炎
から咳
運動時の息切れ
●甲状腺機能異常
●糖尿病の悪化

*しだいに軽快する  **治療終了後、回復する

このほか、臨床検査値の異常として、白血球や血小板の減少、尿たんぱく陽性などがみられる。

■間質性肺炎の症状に注意

インターフェロン投与により、まれに間質性肺炎が現れることがあります。間質性肺炎とは、肺胞(呼吸によって取り込んだ空気が入る袋)と肺胞と仕切る壁(間質)に炎症が起きた状態で、から咳、運動時の息切れ等の症状が現れ、発症します。この病気は発見が遅れると死にいたることもありますので、から咳、運動時の息切れ等の症状が出たらすぐに受診しましょう。特に、肝臓を保護する薬として広く用いられている小柴胡湯を併用すると、間質性肺炎を起こしやすいといわれています。ですから、インターフェロンの投与を受けている間は小柴胡湯を服用してはいけません。

【5.リバビリンの副作用】

ほとんど全例に程度の差はあるものの貧血がみられます。溶血性貧血と呼ばれる赤血球が破壊される貧血もまれにみられます。

Ⅲ.肝臓を守薬

【1.注射薬-注射用グリチルリチン製剤-】
■肝細胞膜を強くし、肝細胞の破壊を防ぐ

静脈注射用のグリチルリチン製剤(商品名:強力ネオミノファーゲンCなど)は肝臓を保護する治療の主力として広く用いられています。

この注射薬の主成分であるグリチルリチンは、漢方の生薬として知られる甘草に多く含まれているもので、肝細胞の表面を覆う細胞膜を強くし、肝細胞が壊れないようにする作用と、肝細胞の修復を助ける作用があります。

■GOT、GPTが高いときに集中的に使われる

注射用グリチルリチン製剤の効果としては、GOT(AST)、GPT(ALT)などの改善が認められています。一般には、GOT、GPTが上昇したときに集中的に使い、GOT、GPTが落ち着いたら注射の量や頻度を減らすというような使い方をします。

GOT、GPTが高いときの投与量は1日40mLが基本で、週3回ないし毎日投与します。投与開始後、効果は徐々に現れますが、人によってはあまり効果が得られないこともあり、そのような場合には量や回数が増やされます。

■低カリウム血症、高血圧などの副作用が出ることがある

注射用グリチルリチン製剤は副作用の少ない薬で、通常の投与では副作用が現れることはまずありませんが、長期間にわたって使い続けたり、大量に投与したりすると、低カリウム血症、高血圧、むくみなどをきたすことがあります。このうち、特に問題となるのは、低カリウム血症と高血圧です。血液中のカリウムが減り、筋肉がはったような感じや脱力感、手足の麻痺が現れる一方、血圧が高くなりますが、これらの症状はカリウム製剤の内服で改善する事ができます。

■グリチルリチンや甘草を含む漢方薬との併用に注意しよう

注射用グリチルリチン製剤を投与されているときは、グリチルリチンを含む他の薬や、甘草を含有する漢方薬の併用に対して注意が必要です。これらの薬を併用すると、グリチルリチンの大量投与となって、副作用の危険が高くなります。グリチルリチンを含む薬としては、肝炎の治療に用いられる内服用グリチルリチン製剤(商品名:グリチロン錠など)があります。また、甘草は、小柴胡湯をはじめ、芍薬天草湯、人参湯、桔梗湯など、様々な漢方薬に含まれています。

利尿薬も、種類によっては血液中のカリウム値が低下するので、注意が必要です。ほかの病気で薬を処方されたときは、医師や薬剤師に注射用グリチルリチン製剤の投与を受けていることを必ず告げてください。

【2.内服薬】
■通院の手間が省ける内服薬の利点は大きい

現在、C型慢性肝炎に用いられている内服薬は、注射用グリチルリチン製剤と同様、肝細胞の破壊を防ぐ働きをもつものです。肝臓を保護する治療の場合、長く治療を続けてゆくことになるので、通院の手間が大幅に省ける内服薬の利点は大きいといえます。

広く用いられている内服薬としては、小柴胡湯、ウルソデスオキシコース酸製剤などがあります。

①小柴胡湯
肝細胞膜を強くし、肝臓の炎症を抑える
小柴胡湯は、柴胡、半夏、生姜、黄ごん、大そう、人参、甘草の7種類の生薬からなる漢方製剤で、1日に2~3回服用します。 柴胡や人参に含まれる成分には、肝細胞膜を強化する作用と炎症を抑える作用があり、甘草には、注射用グリチルリチン製剤の主成分であるグリチルリチンが含まれています。このため、小柴胡湯を服用する事により、肝細胞が破壊されるのを防ぐことができます。
肝臓の繊維化を抑える
小柴胡湯には、肝臓を守だけでなく、肝臓で繊維が作られるのを抑える効果もあるといわれ、その指標となるP-Ⅲ-PやⅣ型コラーゲン・7Sの値の低下が認められています。また、長期に小柴胡湯を服用した患者さんのグループでは、服用しないグループに比べ、肝癌発生率が低かったとの報告があります。
から咳、運動時の息切れ、発熱などの症状が出たらまず内服を中止しすぐに受診を
小柴胡湯の副作用のひとつとして、間質性肺炎が報告されています。小柴胡湯を服用している時に、から咳、運動時の息切れ、発熱などの間質性肺炎が疑われる症状が少しでも現れたら、すぐに服薬を中止し主治医の診察を受けることが大切です。早期に発見して、適切な治療を受ければ、短期間で治すことができます。
インターフェロン療法を受けるときは中止する
小柴胡湯は服用により間質性肺炎が現れる確率はきわめて低いと考えられます。しかし、肺疾患の既往歴のある人や高齢者には副作用が出やすいといわれていますから、特に注意が必要です。
また、インターフェロン療法を受けているときに小柴胡湯を服用すると、間質性肺炎が起こりやすくなることが知られています。インターフェロン療法を受ける予定であれば、治療開始前に小柴胡湯の服用を中止する必要があります。
肝硬変や肝癌のある人は服用してはいけない
肝硬変や肝癌に進展した場合にも、間質性肺炎が起こりやすくなるのではないかと考えられていますので、肝硬変や肝癌のある人は小柴胡湯を飲んではいけません。
グリチルリチンや甘草を含む漢方薬との併用は慎重に
注射用グリチルリチン製剤の項で述べたように、グリチルリチン製剤や甘草を含む他の漢方薬と小柴胡湯とを併用すると、グリチルリチンの量が多くなり、低カリウム血症や高血圧などの副作用が起こりやすくなることが考えられます。小柴胡湯を服用中に他の薬をのむときには、この点に注意してください。
②ウルソデスオキシコール酸製剤
胆汁と同じ成分の薬
古来、動物由来の利胆剤として珍重されてきた「熊胆(くまのい)」の成分であるウルソデスオキシコール酸を科学的に合成した薬がウルソデスオキシコール酸製剤(商品名:ウルソなど)です。
その作用にはさまざまなものがありますが、肝臓に対しては肝臓内の血流の促進、肝細胞の保護などの効能があります。
胆汁による肝細胞傷害を防ぐ
ウルソデスオキシコール酸製剤が慢性可燃に効く仕組みは、この薬の成分である親水性胆汁酸(水に溶けやすい胆汁酸)が増えることにより、胆汁に含まれている細胞傷害性の疎水性胆汁酸(水に溶けにくい胆汁酸)の排泄が高まり、胆汁が肝臓にたまることによって起こる肝細胞の破壊が軽減されるためと考えられています。
妊娠中の人は注意を
ウルソデスオキシコール酸製剤を服用すると、下痢、悪心、嘔吐などの消化器症状や、かゆみ、発疹などの皮膚症状が現れることがあります。一般に、消化器症状は整腸剤や制酸剤などの服用で軽快しますが、皮膚症状が現れた場合には中止します。また、動物実験において胎児毒性が報告されているため、妊婦には投与しない方が望ましいとされています。妊娠中の人や妊娠している可能性のある人は、主治医に必ず報告しましょう。
併用に注意する薬としては、糖尿病に使われる経口血糖降下剤があります。ウルソデスオキシコール酸製剤との相互作用で血糖を下げる働きが強まり、低血糖に陥る危険があるので、糖尿病の人は処方された服用量を必ず守ってください。
③その他の内服薬
小柴胡湯やウルソデスオキシコール酸製剤以外にも、内服の治療薬がたくさんあります。それぞれGPT(ALT)値などの検査値や症状の改善が認められています。
薬品名 副作用
肝臓加水分解物製剤
(商品名:プロヘパールなど)
発疹などの過敏症
内服用グリチルリチン製剤
(商品名:グリチロン錠など)
  • 低カリウム血症
  • むくみ
  • 尿量減少
  • 体重増加
  • 手足の痙攣・麻痺
注意すべき点
●ある種の利尿薬との併用により、低カリウム血症が起こりやすくなる
●甘草やグリチルリチンを含む薬と併用すると、低カリウム血症が起こりやすくなる
●重度の肝硬変の人は服用してはならない

Ⅳ.肝硬変・肝癌の治療

■肝硬変・肝癌治療は日進月歩

肝硬変や肝癌と診断されても、必ずしも悲観することはありません。診断技術の発達で、現在では肝硬変や肝癌が早期のうちにわかるようになり、ごく軽度な段階のものが見出されることも多いものです。また、肝硬変や肝癌の治療法もたいへん進んでいますから、定期検査を怠らないことで早く病気を発見し、治療をきちんと受けるように心がけることが大切です。

【1.肝硬変の治療】
■食事を規則正しくとり、体を休める
肝硬変の初期には、慢性肝炎と同様、ほとんど症状がありません。しかし、肝硬変と診断されたら、治療や検査を受けるだけでなく、食事や日常生活に気を配ることが大切です。
食事は、世界一の長寿国にしたといわれるほど栄養バランスのとれた日本の家庭料理を見直し、規則正しくとるよう心がけましょう。
肥満は非アルコール性脂肪肝炎の合併をもたらすので注意しましょう。
仕事や旅行など、特に禁止すべきことはありませんが、疲れが翌日に残らない程度にしましょう。また、睡眠や食後の休息を十分にとるなどして体をなるべく安静にすることが重要です。肝臓が硬くなると肝臓内の血のめぐりが悪くなり、肝細胞が壊れやすくなりますが、体を横にすることで肝臓に門脈からの血液がたくさん流れるようになります。
ただし、適度の運動も筋肉が衰えるのを防ぐために必要です。1日中寝ていればよいというわけではありません。どの程度の運動が適当か医師と相談してください。
■食道静脈瘤は早期治療が原則
肝硬変でもっとも注意を要するのが食道静脈瘤です。
食道静脈瘤は自覚症状がほとんどないため、静脈瘤が突然破裂し、大量出血することも少なくありません。しかし、半年~1年に1回食道の内視鏡検査を受け、早期発見と早期治療に努めれば破裂を未然に防ぐことができます。
食道静脈瘤にはさまざまな治療法がありますが、現在広くおこなわれているのは、ひとつひとつの静脈瘤に硬化剤を注入して固めてしまう内視鏡的硬化療法と、静脈瘤の根本を輪ゴムでしばり、血行を遮断して静脈瘤を壊死・脱落させる内視鏡的食道静脈瘤結紮術です。
■肝性脳症は薬と食事で改善が可能
精神症状や意識障害が現れる肝性脳症は、便秘、下痢、脱水、たんぱく質の過剰摂取が引き金となって起こることがあるので、日ごろからこれらの点に注意してください。
治療には、腸内でのアンモニアの生成を抑える薬(ラクツロース)、アンモニアを生成する腸内細菌を殺す薬(各種の抗生物質)、体内のアミノ酸のバランスを整える特殊アミノ酸製剤(商品名:アミノレバン注、リーバクトなど)が用いられます。また、食事療法として、野菜などの食物繊維の多い食事をとり、たんぱく質の摂取量を制限します。
■腹水には利尿薬とアルブミン製剤を投与
腹水の前ぶれ症状に、おなかがはっておならが出やすいということがあります。また、手足のむくみも出やすくなります。急に体重が増えたり、おなかが異常にふくらんできたら、腹水を疑い、すぐに受診してください。
治療は、安静を守り、塩分と水分を制限することが基本です。このほか、利尿薬を使って腹水を尿として排泄させたり、アルブミン製剤を投与して血液中のアルブミンの量を増やすことで、症状を改善させることができます。
■肝不全には移植という選択肢も・・・
肝硬変が進行して肝不全状態となり、これまでにあげた治療で改善させることが不可能になったときは、生体肝移植あるいは脳死肝移植により救命できる可能性があります。
生体肝移植とは、健康な肝臓をもつ提供者(ドナー)からその肝臓の一部を患者さんに移植するというもので、ドナーと患者さんの医療費は保険適応となっています。
脳死肝移植とは、生前に脳死後の肝臓提供の意思表示をされ、脳死状態となった方の肝臓を患者さんに移植するというものです。2008年末までの期間で脳死肝移植:58例、生体肝移植:5189例でしたが、いずれにしても、移植を行うにはいろいろな条件があり、移植手術を受けられる施設も限られています。
【2.肝癌の治療-小さいうちに発見すれば治る-】

治療法の選択のポイントをまとめたガイドラインが日本肝臓学会で提案されています。肝障害度・腫瘍数・腫瘍の最大径の3因子を基に決められています。

■肝硬変があれば主に内科的に治療が行われる
肝癌の治療には、開腹して癌のできた部分を摘出する外科的治療のほか、ラジオ波焼灼療法、エタノール注入療法、マイクロ波凝固療法、肝動脈塞栓療法などの内科的な治療法があります。
肝硬変に合併した肝癌の場合、主に肝機能の程度により治療法は違ってきます。肝機能が比較的良好であれば外科的治療を行うことが可能ですが、肝機能が低下している場合には体の負担が少ない内科的治療が選ばれます。
■ラジオ波焼灼療法
460~480kHzの高周波を使用し、焼いてしまう治療です。
■癌を固めるエタノール注入療法
エタノール注入療法は、一般に直径3cm以下の小さい癌に対して行われる内科的治療法です。超音波検査装置の器具を腹部にあてて、モニター画面を見ながら肝臓にできた癌の位置を確認し、そこに針を刺してエタノール*を注入するというもので、エタノールの作用によりガン細胞は瞬時に固まり、やがて自然に分解されて消えてしまいます。
*エタノールはアルコールの一種です。
■電子レンジの原理で治療するマイクロ波凝固療法
マイクロ波凝固療法は癌細胞にマイクロ波を当てて、熱を発生させ、ガン細胞を壊死させる治療法です。マイクロ波は電子レンジに使われている電磁波で、この療法ではマイクロ波を出す針を癌に刺し、熱を発生させて破壊します。

直径3cm以下の小さな癌に対して有効な最新の内科的治療法ですが、治療を受けられる施設は限られています。
■兵糧攻めにする肝動脈塞栓療法
肝動脈からの血流が豊富に発達した肝癌に対しては、肝動脈塞栓療法が行われます。これは、肝癌に酸素や栄養を運搬する肝動脈にゼラチンでできたスポンジ(ゼル・フォーム)を詰める方法です。癌細胞への血液の供給を断つことで「兵糧攻め」にします。
■肝硬変の人は3か月ごとに超音波検査を
肝硬変に合併した肝癌の場合、一度治してもしばしば別のところに癌が発生してきます。しかし、エタノール注入療法は何度でも繰り返し行えるため、定期的に超音波検査を受けて癌を小さいうちに発見すれば、十分治すことができます。初期の慢性肝炎であれば少なくとも6か月に1回程度、かなり進行した慢性肝炎や肝硬変では3か月に1回、超音波検査を受けてゆくことが大切です。
肝切除
肝機能と肝腫瘍のバランスをみて、(手術をしても肝不全にならないような場合)切除に踏み切ります。
特殊な治療
陽子線療法
限られた施設で行っています。当クリニックでも数名治療を行っています。
原理は水素の陽イオンである陽子を加速し、放射線の一種である陽子線を照射し、体内の肝臓癌組織を破壊します。保険適応がなく、300万円程度の費用が発生します。

第3章 検査で何がわかるのか

Ⅰ.採血する検査

【1.基準値(正常値)について】
■基準値とは健康な人の95%が示す値の範囲

血液検査は、肝臓の状態を知るもっとも身近な方法です。静脈から採った血液に含まれるいろいろな物質の量を測ることで、肝臓のはたらき具合を推測することができます。

検査値には、それぞれ基準値(正常値)とされる一定の範囲があります。これは、一般に「健康な人の95%が示す値の範囲」とされていますが、私たちの体は常にある程度の範囲内で変動しているため、たとえ健康であっても状態によっては異常値を示すことがあります。ですから、1回の検査で異常値が出たからといって、すぐに病気であると断定することはできません。また、検査する施設によっても、基準値は異なります。

検査を受けると結果が気になるものですが、小幅な動きに一喜一憂するのは意味がありません。検査値には変動がつきもので、誤差というものが多かれ少なかれあるからです。

【2.肝臓の状態を調べる】
①GOTとGPT(ASTとALT)
肝臓の炎症の程度を知る指標
GOT(AST)とGPT(ALT)はどちらも肝細胞に多く含まれている物質で、肝細胞が壊れると血液中に漏れだしてきます。したがって、血液中のこれらの量を測ることにより、肝細胞が現在どれくらい壊れているか、炎症の程度がどれくらいかを知ることができます。ただし、GOTは筋肉にも多く含まれていて、筋肉の細胞が傷ついたときにも血液中に増えてきます。これに対し、GPTの値は肝臓に異常があるときにだけ上昇するため、肝炎の指標としてはGPTが重視されます。
GOTの基準値の上限は40単位程度、GPTの基準値の上限は50単位程度です。慢性肝炎の場合GOT、GPTともに200~300単位程度にまで上昇する事があります。しかし、500単位くらいにまで上がっても肝臓にはまだ十分な余力があると考えられます。検査結果に対してあまり過敏にならないようにしましょう。
②総ビリルビン(T-Bil)、直接ビリルビン(D-Bil)、間接ビリルビン(I-Bil)
胆汁の流れ具合をみる指標
ビリルビンは、老化した赤血球が脾臓で分解されてできる黄色い物質です。脾臓から肝臓へ送られた後、胆汁成分として合成され、消化・吸収の手助けをして、便とともに体外へ排泄されます。肝機能が落ちると胆汁の生成や排泄が障害され、ビリルビンが血液中に逆流して増えてくるので、肝臓がどの程度正常にはたらいているのかを知る、また胆汁の流れ具合をみる指標となります。
総ビリルビン(T-Bil)とは、血液中の間接ビリルビン(I-Bil)と直接ビリルビン(D-Bil)の合計値をいいます。間接ビリルビンは脾臓でできたビリルビンで、これが肝臓で水に溶けやすいかたちに変えられたものが直接ビリルビンです。
総ビリルビンの基準値は、1.0mg/dL以下です。3.0mg/dLを越えると、黄疸が認められるようになります。
③γ-GTP
肝炎の原因を鑑別するのに有用
γ-GTPは肝臓で作られ、胆汁へ排泄される物質です。胆汁の流れが阻害されると血液中に増えてきますが、特にアルコール性肝障害や薬剤性肝障害、胆石発作では、その値が著しく上昇しています。このため、この値をみることにより、肝炎が主にアルコールや薬のために起こっているのか、胆石発作か、あるいはウイルスが原因で起こっているのかを鑑別することが可能です。
γ-GTPの基準値の上限は男性では80単位程度、女性では50単位程度です。アルコールや薬が原因の肝障害では、しばしば極端な高値になりますが、禁酒や投薬の中止により急速に改善します。
④血小板(Plt)、白血球(WBC)
血小板数は、慢性肝炎の進行度を推測する指標のひとつ
血小板は血液中にある細胞成分の一種で、血管壁の強度を保つはたらきをしている他、出血したとき、血液を凝固させ、出血を止めるはたらきもしています。肝炎の程度を知るための指標であるGOT、GPTは、炎症が落ち着くと値が低くなりますが、血小板数は慢性肝炎が進行するに従って減少する傾向があります。このため、血小板数を調べることで、慢性肝炎の進行の程度(肝臓の繊維化)を推測することができます。
血小板数の基準値は、おおよそ10万~40万個/μLです。ただし、血液中の血小板数には個人差があるうえ、体調によっても変動します。基準値より低いからといって、一概に肝臓の繊維化が進んでいると判断することはできません。例えば、20万でも繊維化が進み、肝硬変を生じている人がいますし、逆に7万でも初期の慢性肝炎である人もいます。他の検査結果も含めて医師に総合的に判断してもらうことが大切です。
また、白血球は赤血球、血小板などと同様、血液の主な細胞成分のひとつで、感染防御における主役のはたらきをします。白血球数の基準値は、おおよそ4000~8500個/μLです。
血液中の血小板、そして白血球数の変動で要注意なのは、インターフェロン療法中の減少です。血小板数が3万以下になると血管壁が弱くなり、歯ぐきから出血しやすくなったり、自然に鼻血が出たりします。また、白血球数が2000以下になると、感染症に対する体の抵抗力が弱くなってしまいます。ですからインターフェロン療法中は定期的に血液検査を受けることが大切です。
⑤P-Ⅲ-P、Ⅳ型コラーゲン・7Sとヒアルロン酸
肝臓の繊維化を推測できる
慢性肝炎が進行すると、肝臓は繊維化していきます。この繊維は、コラーゲンというたんぱく質からできていますが、コラーゲンができるときに一緒に作られ、血液中に流れ出るのがP-Ⅲ-Pという物質です。ですから、血液中のP-Ⅲ-Pの量を測ることによって、いま体の中でどれくらい繊維が作られているのかを推測することができます。P-Ⅲ-Pは、肝臓の繊維化の程度を直接示すものではなく、繊維化の進む速度を反映すると考えられています。
これに対してⅣ型コラーゲン・7Sは、肝臓のなかにあるコラーゲンが分解されてできる物質で、この量を測ることによって、肝臓の繊維化の程度を推測できます。
一方、ヒアルロン酸もまた、肝臓が繊維化するときに多く作られます。この物質は肝臓で分解されますが、繊維化が進み肝機能が低下すると、十分に分解されなくなって、血液中の量が増えます。ですから、ヒアルロン酸も肝臓繊維化を推測するよい指標となります。
⑥AFPとPIVKA-Ⅱ
肝癌の有無を知らせる腫瘍マーカー
私たちの体の中に癌(悪性腫瘍)ができると、特殊な物質が体液中に多く見られることが知られています。この物質自体が体に何か悪さをしているというわけではありませんが、体の中に癌があるのかどうか、どんな種類の癌なのか、そしてその量はどれくらいなのかを知る手がかりとなることから、腫瘍マーカーと呼ばれています。腫瘍マーカーは、しばしば癌のない人でも陽性となることがありますし、逆に癌があってもあまり小さな癌だと陰性となってしまうことが多いので、残念ながら癌発見の手段としては限界があります。腫瘍マーカーには、いろいろなものがありますが、特に肝癌の腫瘍マーカーとして知られているのがAFPとPIVKA-Ⅱです。
AFPの基準値の上限は10~20ng/mLで、肝癌のある人の約90%がこれより高い値となります。ただし、慢性肝炎の人は肝癌がなくても20~50%は高値となります。
PIVKA-Ⅱの基準値は40mAU/mLで、肝癌のある人の約50~60%が高値となります。AFP値が低くてもPIVKA-Ⅱが高い値となる肝癌患者さんがしばしばいるため、AFP検査ではみつからなかった肝癌をチェックするのに役立ちます。
【3.C型肝炎ウイルス(HCV)を調べる】
①HCV抗体、HCV-RNA定性
感染の有無を知る指標
抗体とは、外敵(異物)が体内に進入したとき、免疫担当細胞により作り出されるたんぱく質です。外敵が血液中にいるときや、次に同じ外敵が入ってきたときに、外敵に結びつき、その活動を封じ込めるはたらきをします。
 免疫担当細胞は、侵入した外敵に対してそれぞれ特異的な抗体を作るため、血液中にC型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体があるかどうかを調べれば、感染の有無を間接的に知ることができます。
 HCV抗体検査は体内にHCVがあることを直接証明するものではないので、必ずしも現状を正しく反映するとは限りません。例えば、初期の急性肝炎で抗体がまだできていない人や、免疫力が弱く抗体ができない人では陰性、過去に感染したけれども現在はHCVがないという人では弱陽性となります。
 HCV-RNA定性検査は、血液中にあるHCVの遺伝子(HCV-RNA)を検出する検査です。一般に、体内のHCVの存在を直接証明するために、C型肝炎の確定診断やインターフェロン療法の治療効果の判定の際に行われます。
 なお、インターフェロン療法の効果判定では、治療終了後6か月以上の間、HCV-RNA定性検査の結果が陰性で、かつGPT値の正常な状態が続いた場合に完治と判定されます。治療終了時にこの検査で陰性と判定されても、肝臓内に少量のHCVが残っている可能性があるので、陰性になったからといって、病気が治ったと早計に考えてはいけません。
②HCV-RNA定量
ウイルス量を推測する
HCV-RNA定量検査は、血液中にあるHCVの遺伝子の量を測る検査です。体内のHCV量を推測する検査として、インターフェロン療法の効果を予測したり、その効き具合を確認するために適宜実施されます。HCV-RNA定量検査には、分岐DNAプローブ法(b-DNA法)とPCR法との2種類の検査方法があります。分岐DNAプローブ法では、単位はMeq/mL*、PCR法ではKコピー/mL**と異なります。
なお、分岐DNAプローブ法でもPCR法でも、血液中のHCVの数を直接数えて測っているわけではないということを忘れてはなりません。これらの検査値はあくまで大ざっぱな値であり、治療方針を決定したり、インターフェロン療法の治療効果を確かめる際のひとつの目安とされるものです。また、ウイルス量が多いからといって必ずしも病気が進んでいると言うわけではないので、心配しすぎないようにしましょう。
*1Meq/mLは血液1mL中にウイルスの遺伝子が100万個分あることを意味します。
**1kコピー/mLは血液1mL中にウイルスの遺伝子が1000個分あることを意味します。
③HCVセロタイプを調べる
HCVの種類を調べる
HCVは、いくつかの種類に分類する事ができますが、日本でみられるものはグループ1とグループ2に大別されます(セロタイプ)。HCVセロタイプ検査では、そのいずれのグループのHCVに感染したかを見分けることができます。グループ2はインターフェロンがよく効くといわれており、インターフェロン療法が有効か否かを予測する目的で行われます。

Ⅱ.腹部超音波検査-体を傷つけずに肝臓の状態をみる

■臓器の状態がわかる

腹部超音波検査は、超音波*を体外から当て、その反射状態を画像として描き出すことにより、臓器の様子を調べるというものです。

検査のやり方は、超音波の発信と受信をする道具を調べたい臓器に近い皮膚に当てるだけで、患者さんには痛みなどの体の負担はまったくありません。しかも、超音波は体に無害なので、手軽に繰り返し行うことができます。

*音の一種なのですが、非常に高い音なので人間の耳には聞こえません。

■慢性肝炎の進行度の推測と肝癌の発見に有用

肝臓の繊維化が進むと、肝臓の表面がでこぼこになり、形も変わって全体的に萎縮した感じになってきますが、そのような状態になっているかどうかや、その進行の程度を逐次超音波でみてゆくことで、病状を的確に把握していくことが可能となります。さらに、超音波検査は肝癌の発見に大変有用であるほか、腹水、脾腫、門脈の狭窄、胆石などの有無も診断することができます。

Ⅲ.肝生検-直接、肝臓の組織を調べる

■慢性肝炎の進行度を判定する決め手

肝生検は、肝臓に細い針を刺し、肝臓の約10万分の1~1万分の1の組織片を採取して、その様子を顕微鏡で調べる検査です。肝臓の炎症の状態や繊維化の進み具合を正しく知ることができるので、C型慢性肝炎の思考度を判定する決め手となるほか、飲酒歴の長い人の場合には、アルコール摂取により肝臓がどれくらい影響をうけているのかも知ることができます。また、インターフェロン療法の効果を予測する手がかりになります。一般に、慢性肝炎、肝硬変を確定診断するときに行われますが、治療中に症状を確認する目的で実施されることもあります。

■2つの方法がある

肝生検には、超音波検査で肝臓の様子を確認し、皮膚の上から針を刺して組織を採取する方法と、腹部を1cmほど切開し、空気を腹腔*内に入れて、腹腔を広げた状態で腹腔鏡を挿入して、肝臓の様子を直接観察しながら組織を採取する方法があります。後者のほうが患者さんに負担がかかりますが、肝臓の表面の状態を知ることができるほか、特に悪くなっている部分の組織を採ることができるので、より正確な診断をすることができます。

局所麻酔をしますので、超音波検査をしながら行う方法では、検査中に痛みを感じることはありません。ただし1泊から3泊の入院を要します。腹腔鏡を挿入して行う方法では、空気を腹腔に入れるため、やや苦しく感じることがあります。こちらは3泊から7泊の入院が必要となります。

*腹壁と臓器のすきまのこと


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